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2009年ゾロ誕企画(公開期間 2009/11/11~12/31)
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海賊設定で読み切りです。
誕生日話第一弾ということで、甘めを目指しました(^^;

修正しました
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 さあ、どうしようと、目の前で渋面のまま黙り込んだゾロの姿に、俺は冷やりとした汗を掻いていた。
「俺にか・・・?」
「ああ・・・」
 深夜、正確には今日の日付になる瞬間。俺はゾロを俺の城であるキッチンへと呼びつけた。
「こんなもんで悪いけどよ」
 本当はこんなものじゃなくもっと高価で思い出になるようなものをプレゼントしたかった、と、いうのはただの未練だ。
 大好きな、いや、大切で愛おしい恋人の誕生日にあげる為の贈り物を一月も前から考えて用意していたにも関わらずそれは本日あっさりと海の底へと消えていってしまった。
 深い緑の、ゾロの瞳をそっくり写し取ったような宝石のついたピアス。
 初めてゾロと会った時からその耳を飾る金のピアスはなにか特別な意味があるのかもしれないと思いつつも、恋人に自分が選んだそれをつけて欲しいと、せめて二人っきりの時は自分がゾロの為に選んだピアスをつけた恋人を愛でたいと、姑息な望みも抱きながら誕生日プレゼントに用意し、大切に大切に胸ポケットに仕舞いこんでいたのだ。
「いや別に悪くはねぇが・・?」
 ゾロの誕生日前日に近場を通った同業者が挨拶代わりに戦闘を仕掛けてきたのは、まあ、よくある話だ。お互いに命のやり取りをしているその場で何が起こったって不思議はねえ。ちょっとはしゃぎすぎた船長が海に落ちて余分な手間を掛けられるのもよくあることだ。ただ、俺としては何故今日、そしてこの日を選んだかのようにアレコレとやってくれるのだと本当に頭を抱えたくなったのだ。
 そして、義理堅い恋人は数日前から約束していた11日に日付が変わる瞬間にキッチンへ来て欲しいという約束を守って、そしてこの場に居る。
 もちろん二人だけで祝う為の料理も夕食の仕込みと合わせて完璧に用意していた。
 戦闘の後のバタバタや今夜の為の準備で忙しくソレを無くしたと気付いたのはほんの数分前の出来事だったのだ。
 唯一の想定外。海に落ちた船長を助けた時に波に攫われ、流されていった恋人へのプレゼント。
「おい、おい! クソコック!」
 ドンっと大きな音がして、俺は不自然なぐらいに大きく身体を震わせて伏せていた顔を上げた。
「ゾロ・・・」
「しけた面してんじゃねぇ」
 はあっと大きく息を吐き出し、ドカリと大きな音を立ててゾロがテーブルに着く。
「せっかくの飯が不味くなる」
 きっぱりと口にして、ゾロの手がテーブルの上にセッティングされていたグラスを取り上げ、俺の方へとその口が傾けられる。
「注いでくれるんだろ?」
 ニッと口角を上げ笑ったその顔に俺は慌てて料理と共に用意していたワインを開封し、そっとゾロのグラスへと注ぐ。二人だけで呑むときでも普段はラム酒しか用意しないのだが、今夜だけはと奮発したそれにゾロの目が嬉しそうに細まった。
「・・・んっ」
 コクリと喉仏が動き、ゆっくりと味わうように再度グラスへと口をつけた姿にホッと胸を撫で下ろした。喉を通り抜けた後、微かに口の中に残る甘さがもしかしてゾロの好みではないかもしれないとは思ったのだが、味はピカイチに美味く、テイスティングした時にナミさんでもロビンちゃんでもなくゾロが浮かんだ俺としてはどうしてもこのワインはゾロに飲んで欲しかったのだ。
「美味い」
 皿から取り上げた魚のカルパッチョを口にしたゾロがニヤリと笑って感想を口にする。その一言を聞いた瞬間、俺はがっくりと肩を落としていた。確かにあのピアスはゾロにとても似合っていて、きっと今の二人の関係を形付けた記念になっただろうと思うと溜め息が漏れる。
「・・・・ごめん・・・ゾロ」
「ん?」
 もぐもぐと両頬いっぱいに料理を頬張りながら、グビリグビリとワインを飲んでいるゾロに俺はハアア~と大きな息を吐き出した。
「テメェにプレゼントがあったんだ・・・・」
 コトン、カチャンと小さな音がして、ゾロの手からフォークとグラスが離れる。
「わざわざ深夜に呼び出したのも」
「・・俺の誕生日だからだろ?」
「知ってたのか・・・」
「ああ」
 目を細め、俺がこの場に呼び出した理由もあっさりと口にしたゾロに俺はやはり何か記念になるものを用意したかったと後悔した。
「ただ用意はしてたんだ。テメェに似合いそうなエメラルドのピアス」
 深い深い瞳の色をそっくり写し取ったような色のピアスをつけたゾロを見てみたかった。
「そうか? 俺はこれで十分だけどな」
 チンと澄んだ音を立ててグラスの縁を指先で弾いたゾロに俺は複雑な笑みを浮かべるしかない。
 ワインを事の他気に入ってくれたのは嬉しい。だが、やっぱり俺は胸の中のもやもやを消化出来ずにいる。
「クソゴムを海から拾い上げた時、あの時に落としちまったみてぇで・・・・無くしちまった」
 俺の言い訳にゾロがちょっとだけ眉を上げるとフッと小さな息を吐き出して笑う。
「ルフィが助かって良かったじゃねえか」
 確かにゾロが言う通りだ。
 もし船長に何事か起こったというのであればどれだけ望んでも二人揃ってこんな夜は迎えられなかっただろう。
「・・・・わかってる」
 頭ではわかっているが心の中で納得出来ていないということなのだ。
 そんな俺の心情を分かっているのかいないのか、頬杖をついて俺の顔を見ていたゾロが小さな息を吐き出した。
「何が不満だってんだ」
 生きている、二人で居る、美味い料理に酒。これ以上何が必要だというのだとゾロの問い掛けに俺は黙るしかない。恋人らしい何かを、記念になる何かをあげたかったのだというのはただの俺の我儘にしかならないのだろう。しばらく気まずい沈黙が二人の間を満たし、俺は決意して口を開いた。
「それでも、俺はあのピアスをテメェにあげたかったんだよ」
 恋人として、ゾロに俺の想いを形にしたものを、一つでも。
 俺とゾロの間に繋がる何かをあげたかったのだとゾロを見て思う。
 俺の告白にゆっくりと目を閉じ、額を数度指先で撫でてから、ゾロはしっかりと頭を上げると俺をじいっと見上げてきた。
「わかった」
 はっきりと了承の言葉を口にしたゾロに俺はかすかに首を傾げた。
 何が分かったのだろうと口にする前にゾロはニヤリと楽しげに笑った。



「テメェを貰ってやるからさっさと寄越せ」



 ああ、参った。完敗だととても楽しげに笑ったゾロに俺は白旗を掲げる。
 確かにこれ以上ない恋人への贈り物ではあるだろう。
「お誕生日おめでとう、ゾロ」
「おうっ」
 ニッと笑いながら差し出されたゾロの手を握り返し、これから先の未来を想像して俺はとんでもない恋人に貰われたのだろうなと、返品はきかねぇぞと思いながら小さく声を立てて笑ったのだった。


~END~

2009/11/11 『覚悟』
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