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2009年ゾロ誕企画(公開期間 2009/11/11~12/31)
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パラレル設定のお話です。
トレジャーハンターのサンジとゾロの出会い編って感じですね~
ご希望があれば続けます(^^



修正しました

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 大地に根を張り、その腕いっぱいに太陽の光を浴びて緑の葉を輝かす大樹はその丘にあって一際目を引いた。
「すげぇなあ」
 どこか適度に休める木陰を求めてフラフラと街外れまで足を運んでしまったのだが、目の前に広がる緑と光のダンスに青年はウキウキとした気分で腕に下げていた布製のバッグを地面へと下ろした。
「樹齢何百年って所か」
 キラキラと葉を輝かせる光と同じ色、いや、もっと黄色味の強い、蜂蜜のような金色の髪をした青年は大きく背を伸ばしながら目の前の大樹を振り仰ぐ。色鮮やかなブルーのシャツに黒の皮のズボン。よく磨き抜かれたブーツの金具がチラチラと葉の隙間から落ちてくる光を反射させていた。ふんわりと風を孕んで翻った紫紺のコートは滑らかに光を反射し、キラキラと輝く青年の髪と相俟って幻想的な光景を生み出していた。
「おおーい、サンジィーー!!」
 背後からの大きな声にサンジと呼ばれた青年はゆったりとした動作で振り返った。
「よお、長っ鼻」
「誰が長っ鼻だ!!」
 勢いよく駆けて来てゼエゼエと目の前で息を切らせている鼻の長い男にそう呼びかけてサンジはニヤリと頬を歪める。速攻で返してきた男もやはりサンジと同じようにニヤリと頬を歪めて、バシンと大きな音を立てて二人の手のひらが打ち合わさった。
「よく来たな、サンジ!」
「テメェも相変わらず元気みてェで良かったぜ、ウソップ!」
 ギュウウウっと力任せに手のひらを握り合い、力比べに負けたウソップの頬が引き攣り始めたのを見てサンジはパッとその手を放した。
「2年? いや3年ぐらいか?」
「ああ、2年と4ヶ月って所だな」
 ウソップの手を放し、足元に放置していたバッグを取り上げたサンジにウソップが懐かしそうに目を細め尋ねてくる。それに答えながらサンジはもう一度大きな木を振り仰いだ。
 2年と4ヶ月前。
 サンジはこの鼻の長いウソップという男とパーティーを組んでトレジャーハンターという仕事をしていた。
 トレジャーハンターといえば聞こえはいいが、ある意味何でも屋で街の小さな用件を少額で引き受けたり、噂を聞いて密林の奥へと足を運んだりもした。このウソップという男はサンジが親元(と言っても実の親ではないのだが)を飛び出してから出会った男で、手先が器用で臆病だが勇気のあるとても気のいい男で、一番初めに組んだ相手がウソップだったことは幸運だったと今でも思っている。
 そのウソップが故郷に帰るのだとそう告げて、パーティが解消になったのが2年と4ヶ月前の事だ。
 故郷に待たせているカヤという彼女は元々身体が弱いらしく、その彼女の身体を直すための薬を求めてトレジャーハンターになったのだと、酔うと彼女の素晴らしさからその心情までウソップはとうとうとサンジに語っていた。そして、ある村を訪問した時、その村外れに住んでいるチョッパーという変わった医者と仲良くなり、その病気は治せると宣言したチョッパーを連れてウソップは故郷に帰っていったのだ。
「カヤさんは元気か?」
 先に立って歩くウソップの背を眺めながらサンジはゆっくりとポケットから取り出した煙草を口に運んだ。
「ああ、すっかり良くなって。今はチョッパーの助手みたいなことをやってるぜ」
 弾んだウソップの声にサンジはホッと心の中で安堵の息を漏らした。
 カヤの病気がどれほど重いのか実際の所サンジは詳しく知っていたわけではないが、チョッパーという小さな獣の姿の医者がかなりの腕を持つ名医だということは彼の治療を受けたサンジ自身も把握していた。その彼がウソップの説明を聞き、その病状をカルテに書きながら少しでも早くカヤに会いたいと言ったのだ。だからこそ急なパーティー解消となったのだが、旅立つ時にこっそりとサンジがチョッパーに確認した限りではカヤの容態はそう楽観できるものではないとの事だった。
「そうそう、チョッパーがサンジが来たらまず自分の所に連れてきてくれって言ってたぞ。また、怪我したんだって?」
「・・・あ、ああ、少し前だけどな」
 振り返り少しだけ眉を潜めて言われた言葉にサンジは小さく苦笑する。
 ウソップやチョッパーから届く手紙に気が向けば返事を返していたのだが、つい二月ほど前、同業者と揉め、その際の戦闘で大怪我を負ってしまった。その時にたまたま届いた手紙がチョッパーからの物で、怪我の酷さにサンジの身内かもしれないと気を利かせた医者が連絡を取り、結果としてチョッパーから速達でいくつもの薬が届けられ、サンジは奇跡的な回復をみせたのだ。
 その礼もあり、サンジは初めてウソップの暮らすこの地を訪れる決心をしたのだ。
「なあ、サンジ」
「んっ?」
 丘を後にし、のんびりとした風景の村の中を歩いていく。
「今一人なのか?」
 どこか沈んだ声色のウソップにサンジはその蒼い瞳を少し見開いて小さく笑う。
「いや、適当に組んだり解消したりって所だな」
 その時の仕事内容に合わせて必要であれば他人のパーティーに参加することもあるのだが、それでもウソップと組んでいた時のように常時誰かと共に行動をしているということはない。余程しっかりとしたリーダーが居ないとパーティーを組んだ後のトラブルで、今回のように怪我を負わされることも少なくない。
「紹介したいヤツがいるんだが・・・」
 ちょっと言葉を濁しながら続いたそれにサンジはゆっくりと煙草の煙を吐きだした。
「そりゃ構わないが」
「ちょっと問題のあるヤツなんだが、腕は確かだし、案外組めばいいパーティーになるんじゃないかと思うんだ」
 ウソップなりに今回の怪我の事は気にしていたんだろうなとサンジは目を細めて笑う。本当に自分にはもったいないほどの相棒だったなと、離れていても心配してくれる相手に心の中で感謝する。
「まあ、先にチョッパーに会って・・・」
「ゾロォォ!! テメェってヤツはヤツはヤツはァアア!!」
 診療所と書かれた扉が開かれたと同時に中から甲高い悲鳴のようなチョッパーの声が響き、ウソップはノブを持ったまま仰け反り、サンジは咄嗟に片手で耳を塞いだ。
「あれほど無茶すんなって言ってるのに」
「・・・・・」
「言い訳すんな! 血が出てるじゃねえか!」
 パタンと軽い音を立てて音を遮断し、先導していたウソップがなんともいえない表情でサンジを振り返る。
「もしかして・・・」
「あー、まあ、そうかな?」
 へらりと笑ったウソップにどうやら紹介したい相手というのが先程チョッパーに怒鳴られていたゾロという男なのだろうとサンジも苦笑いを浮かべる。キャンキャンと怪我に関しては大げさなぐらい騒ぐチョッパーの姿を思い出してみたこともない相手に災難だったなとサンジは心の中で労った。
「よし、開けるぞ」
「ああ」
 ガチャリと再度音を立てて開かれた扉の中は先程とは打って変わって静かだった。
「おお~い、チョッパー、サンジ連れてきたぞー」
 スタスタと扉から奥へ、その奥、診察室と書かれた部屋に入って行ったウソップを追ってサンジも足を奥へと進める。
「チョッパー、久しぶ・・・・」
 シャッと鋭い音を立てて開かれたカーテンの中からクルリとしたチョッパーが見上げてくるのにサンジは気付きもせずポトリと口元から煙草を床へ落とした。
 鮮やかな緑の髪。日に焼け、鍛え上げられた若いしなやかな身体を流れる血。
「なんだ、テメェ」
 サンジを睨み付けてきた瞳は綺麗なエメラルドグリーン。噛み締めていたのか薄く形の良い唇は赤く色付いたまま歪められていた。
「ゾロ! 動くなってば!」
 サンジの登場で一瞬止まっていた治療を再開させたチョッパーが緑の髪の青年を叱り付ける。それに小さく鼻を鳴らすとゾロと呼ばれた青年は大人しくチョッパーの方へと向き直った。
「まあ、見た目はこんなだけどよ、いいやつなんだ」
 治療の邪魔にならないようにと診察室を出て、ウソップが小さく笑いながらそうサンジに告げてくる。その言葉に軽く頷きながらサンジは先程見てきた大樹を思い出していた。
「大丈夫だ。面白そうなヤツじゃねえか」
 ニヤリと殊更意地悪そうに笑えば、それを受けてかウソップも楽しげに笑う。
 太陽に向かって枝葉を伸ばす若木のようだったとサンジはゾロの姿を思い出し、いや違うかと小さく唇を歪めた。大樹についていた青い、まだ熟す前の実のようだったと思い直す。
「料理してぇなあ」
「お? してくれんのか?」
 ポツリと口から漏れた言葉に喜色満面で聞いてきたウソップにサンジはもちろんとにこやかに答える。
「さっきの、ゾロだっけ? アイツもカヤさんも呼んで、今夜は宴会だな」
「お、おお。カヤも喜ぶ」
 カヤの名前を出したことでそわそわとし始めたウソップにサンジは小さく笑うと、調理する場所の確保をウソップへ依頼する。それを二つ返事で引き受けて、サンジをその場に残して去っていった気のいい過去の相棒にサンジは目を細め、そしてこれからパーティーを組むだろう未来の相棒を思い浮かべて唇を歪める。
「早く料理してみてぇな、アレ」
 予想外に美味そうな、固い果実を思わせる未来の相棒にサンジは淫蕩な笑みを浮かべてその姿が現れるのをのんびりと待っていたのだった。



++END++
 

2009/11/13 『果実』

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