[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ゾロが双子という設定です。
サニー号に乗ってる弟の下へ立ち寄った兄というお話の続きになります。(11/24日記参照)
カプ的にはSZZになります(^^;
シリアス系のお話です
SIDE : ゾロ (弟)
----------------------
物心ついた時から俺の前にはアニキがいた。
生まれたのが俺よりほんの数分早いというだけだが、それでも俺にとってはアニキはアニキだった。
「へえぇ~そんじゃ、ゾロはゾロより海に出るのが早かったのか」
「ああ、こいつが海に出るより俺の方が若干な。二人ともゾロだし、ややこしくなるから俺の事はゼロでいいぜ? 二人揃ってる時はそうしてるしな、船長」
「ん~ん? でもゾロはゾロだしなぁ」
「まあ、俺はどっちでもかまわねぇが」
う~んと首を捻って唸ったルフィにアニキが笑う。
「えー、案外、ゾロと一緒でお兄さんも迷子で帰れなくなっただけなんじゃないのぉ?」
「まあ、そうとも言うかもな」
「えええー! ウッソォ!」
けらけらと楽しげにナミが笑う。
「さすが兄弟! 二人とも方向音痴かよ~」
「さあ?方向音痴はしらねぇが、どうやら迷子癖は曽祖父からの由緒正しい遺伝らしいぜ?」
「ぶっはっ!! 由緒正しいって!」
アニキの悪戯っぽい笑いに腹を抱えて笑い始めたウソップと、やはり楽しげに笑っている皆を眺めて俺も小さく口元に笑みを浮かべる。ダイニングのテーブルに着いてからアニキを取り囲んで皆が思い思いに質問を投げかけている姿を少し離れた場所で眺める。
まさか此処、グランドラインでアニキに会う事が出来るなんて思っても見なかった俺は、突然の再会に皆の前だというのも忘れ、ガキみたいにはしゃいでしまったのだが、どうやらアニキに対して子供っぽい言動をしてしまうのは俺だけではないらしく、ルフィも、ウソップも、そしてナミまでも、どこか甘えたような話し方をしてアニキに懐いている。
「ゾロのお兄さん。剣士さんは大人気ね」
クスリと小さく横で笑われて俺はその声の持ち主へと顔を向けた。
サラリとくせのない黒髪を揺らし、目を細めて楽しそうにクルーとアニキのやり取りを見つめているロビンにまあなと答えて、俺は漂ってきた香りにスンと一つ鼻を鳴らした。
「オラオラ、テメェら、どきやがれ!」
主にルフィやウソップといった男連中に荒い声を掛けたコックが右手に料理の乗った皿と、もう片手に酒瓶を下げてその輪の中に割り込んでいく。
「ほら、遠慮なく食いやがれ」
「おう、すまねぇな」
再会の挨拶を交わす俺達と、その後簡単な自己紹介をしていたときに鳴った腹の音に紹介もそこそこ何時から食ってねぇと質問したコックに、昨日の夜から酒と簡単なつまみしか口にしていないと暴露したアニキを問答無用とばかりに青筋を立てたコックがサニー号のダイニングへと引き摺ったのは15分ほど前の事だ。
「うまほ~~」
「ルフィ、客人の皿に手ェ出しやがったら今夜の飯は抜きだからな・・・」
「う・・・、うう・・・、分かってるって」
「ククク・・・おもしれぇなあ。お前、船長なのにコックに頭が上がんないのか?」
料理から立ち上る湯気と香ばしい香りにルフィでなくても胃袋は刺激されるが、コックの目の前で他人の食事にまで手を出そうとするような命知らずの人間はルフィ以外にはいない。ゴクンと大きく唾を飲み込んで我慢したルフィと忠告したサンジを見比べてアニキが楽しそうに笑う。
「紹介が遅れたな、ゾロの兄さん。俺はサンジだ。このサニー号の厨房を預かっている。ウチのクルーには海の上で飢え死にしたくなきゃ、コックには逆らうんじゃねえと徹底して教育してあるからな。食に関しては俺がルールだ。・・・・・もちろん、客人、あんたも此処にいる以上例外じゃねえ」
料理の為に捲り上げていた袖をゆっくりと下ろし、煙草を口に咥えながら告げられた言葉にアニキの口角が上がる。
「俺はロロノア・ゾロ。・・・・肝に銘じておく」
ニヤリとどこか挑発的な笑みを返して、勧められるままに食事を始めたアニキから目を逸らして俺は足元でゴリゴリと乳鉢で薬草をすりつぶしているチョッパーへと目を向けた。
「チョッパーはあっちに混ざらないのか?」
ロビンが俺の横に留まった理由はアニキに警戒してだと分かっているが、チョッパーがあの楽しそうな輪の中に入っていかない理由が思いつかない。
ゴリゴリ、ゴリゴリとチョッパーの手が動き、その動きに合わせて青臭い草の香りが上がってくる。
「・・・いい、此処がいいんだ。あ、でも、もしゾロが迷惑なら医務室に行くから・・・」
「いや、迷惑なんかじゃねぇ・・・・」
アニキが乗船して、ワイワイと騒ぐ中に現れたチョッパーは一言二言、アニキと挨拶を交わしただけで、他の皆のように質問をしたり話しかけようとはしない。チョッパーの職務上、アニキの怪我の有無を確認するかと思ったのだが全く話かけようとしないのだ。
「ふふ・・・ゾロには分からないのね」
俺達の会話に割り込むように笑ったロビンが軽く首を傾げる。
「ロビン!!」
「何がだ?」
焦った声でロビンの名を呼んだチョッパーを軽く目で制して俺はロビンに言葉の続きを促した。
「怖いのよ。貴方のお兄さん」
「・・・・・・え?」
「・・・・・・・ロビン・・・・」
静かにその唇から語られた言葉に俺は小さく目を見張り、チョッパーの溜め息混じりの小さな声に瞬きを繰り返す。
「上手く説明できるかどうかは分からないけれど・・・・本能的な恐怖とでも言うのかしらね? 彼に近寄ると私の中の闇が引き摺られそうになるわ」
ロビンの例えに俺は小さく息を飲んだ。
「彼は貴方と違って人当たりもよくて親しみやすそうに見える。・・・けれど、その反面、どこか暗い闇を表面一枚隔てただけで満たしていそうな感じがする。そう、見えない部分の深く暗い闇に自分の中で押し殺して忘れようとしている過去の闇が呼び起こされそうで怖い」
「・・・・・ロビン」
顔を悲しげに歪め、潤んだ視線を上げたチョッパーの肩から白い手が生え、ゆるゆるとそのピンクの帽子を撫でていく。
「ルフィやウソップ、ナミちゃん達と私や貴方が抱える闇は別物だわ。チョッパーは動物の本能で彼を怖いと感じてしまうから近寄れないのね」
ふわりと優しく微笑んだロビンにチョッパーの頭がコクンと縦に振られる。そういえば昔から無愛想な俺と違ってアニキは人当たりもよく誰からも好かれたが、動物の類にだけは懐かれなかったなとチョッパーを見て思い出した。
「・・ゴメン、ゾロ」
申し訳なさそうに口を開いたチョッパーに俺は手を伸ばすとグリグリと乱暴にピンクの帽子を揺らす。
「イッテェ、イッテェってゾロ! 揺らすなって、こぼれちゃうだろ!」
「あー、気にすんな?」
小さな笑い混じりの抗議の声にそっと声を掛けて、俺はチリチリと体の表面を撫でていった視線にそっと顔を向けた。
「・・・・・ゾロ?」
「なんでもねえ」
向けた視線が絡む前にそっと逸らされた蒼い瞳に俺は唇を歪める。
俺やロビンが抱える闇とはまた違う闇を持つコックがアニキの闇に気付いていないとは思えないが、いったいどういうつもりでその輪の中にいるのだろうと、その皮肉げな笑みを刻んだ横顔に心の中でそっと溜め息をついたのだった。
SIDE : サンジ へ続く