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眩しい太陽の続きのお話になります。
特殊設定海賊パラレル
SIDE : サンジ
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シュッと音を立ててマッチを擦り、煙草へと火をつけた俺はその煙を肺に満たす。
一日の終わりにこうして一服するのが一番の贅沢だと俺は指先から立ち上る煙を目で追ってゆっくりと吐き出し、コキリと肩を一つ鳴らした。
「アイツ等は・・・・ああ、風呂か」
サニー号の手摺に寄りかかって上げた視線の先に立ち上る湯気を見つけて小さく苦笑を浮かべ、フウッと大きく息を吐き出し、俺はゆっくりと体の力を抜いた。
今日の事だ。ウチの剣士の兄と名乗る男がサニー号に乗船してきたのは。
名前はロロノア・ゾロ。緑の髪に翡翠の瞳。俺が知るクソ剣士とうり二つの男は、クソ剣士の双子の兄になるらしい。らしいといっても第三者である俺が見てもそっくりな二人が他人ということはないだろう。
『ゾロのアニキなら何時までいてもいいぞ』
クソ剣士の兄であるゾロを気に入ったらしくルフィの一言でしばらくこの船に滞在する事となった。
『アニキ!』
嬉しそうに呼んで駆け寄ったクソ剣士の顔を思い出して俺は思わず苦笑を浮かべる。
「ガキかよ・・・」
実際、無邪気なと言っていいほど警戒心の欠片もなかった剣士の顔は子供のように喜びに溢れていた。
腰に下げた三本の刀。左腕のバンダナ、白のシャツが黒に近い紺のタンクトップに変わっていたが、最も違っていたのは兄だと名乗ったゾロの耳にはクソ剣士と違ってピアスがなかった事だ。兄弟揃って三刀流とは変わった家系だと思うが、同じ流派であればそんなもんだろうと思う。
ゾロのアニキがサニーに乗り込み、危険はないと判断したブルックは見張りに戻り、フランキーは客人の為のベッドを用意に工房に篭ってしまい、彼等はゾロのアニキとあまり接触していないが、ルフィやウソップ、ナミさんといった面々はべったりと言っていいぐらいゾロのアニキにくっついて回っていた。そんな二人も夕食の席であらためてクソ剣士のアニキと挨拶を交わしている。
「さてと・・・・、俺も風呂にいくか」
今夜の見張りは昼に引き続きブルックが引き受けている。先程差し入れた夜食はそれほど量はないが彼なら十分のはずだ。
「よし、混ざってくるか」
ルフィ達がゾロのアニキを誘って風呂で遊んでいるはずだ。ガキっぽいその騒ぎには滅多に混ざらないのだが、たまにはいいだろうとゾロのアニキに多少の興味も惹かれて俺はゆっくりと風呂場へと足を向けたのだった。
まずゆっくりと扉を開けて俺はアレ?と首を傾げる事となった。
てっきり大騒ぎしていると思っていた風呂場が予想外に静かだったからだ。
「・・・誰もいねぇのか?」
外から湯気の出ているのは確認しているし、そんなはずはないのだがと衣服を入れるための籠を覗き込んで眉を顰めた。
二つの籠には白いシャツと紺のシャツ。他の籠は空のようで、衣服が入っているのはこの二つだけだ。 また、籠向こうに置かれている6本の刀と、今の入浴者が想像できる持ち物に俺はかすかに溜め息を漏らした。
どうやらルフィもウソップもとうに風呂は出てしまったらしい。
兄弟水入らずで風呂に入っているのなら邪魔しない方がいいのだろうかと一瞬考えて、だが、今更此処で風呂場を出て行くのも妙に意識しているのだと暴露しているかのようで、俺は意を決して服のシャツのボタンに手を掛ける。
「・・・ぁ・・・、ちょ、っと」
突然耳に入ってきた小さな声に俺のボタンを外しかけた手がピタリと止まった。
「イイだろ・・・ほら」
「やっ、止めろって・・・んぅぁ」
楽しげな笑いを含んだ声と少し焦ったような掠れた甘い声が聞こえて、その声に俺は動けなくなる。
「・・・気持ちいいくせに」
「ちがっ!・・・・・ぁ、っ・・・」
動けない耳にどこかいやらしく響く音が入ってきて、いったいアイツラは何をやってんだと、グルグルと頭の中で回る疑問と妄想、そして止むことない甘い声に俺のあらぬ部分がムクリと反応しかけて慌てる。
「ほら、固くなってるぜ?」
「・・・・ふぁ・・・・ん、ヤメっ」
一際大きな甘い声が鼓膜を揺らし、とうとう俺は弾かれるようにして浴室へと続く扉を大きく開けた。
「テメェら、何やって!!」
「・・あ?」
「・・・・?」
何をやってるんだと怒鳴りかけた俺は浴槽に浸かったまま不思議そうに見上げてくる二人の視線を正面から浴びて動きを止める。二人が全裸なのは風呂場だから当たり前の事で、一人の背中にもう一人が手を当てている姿も何処といって不自然な所は見当たらない。
「どうした?クソコック?」
眉を寄せ、チリンと小さくピアスを揺らしながら問いかけてきたのはウチのいつものクソ剣士のほうだった。
「アッ・・・・駄目、だって」
その瞳がゆるゆると眇められ、薄く開かれた唇の間から熱い息が吐き出される様に俺はカアアと血の気が顔を登っていくのを感じる。
「気持ちいいんだろう?素直に感じてろ、ゾ、ロ」
「・・あっ!」
グッ、グッと後ろに陣取るゾロのアニキがその手の親指を背中に押し付けるたびに、ア、ア、と気持ちよさげな声がクソ剣士の唇から零れていく。トロリと蕩けた眼差しとほんのりと赤く染まった頬と、半開きの唇から漏れる掠れた甘い声にとんでもない妄想が頭の中を過ぎって、俺は必死で二人から視線を引き剥がすとクルリと背を向け、飛び出すようにして風呂場を後にした。
「ちくしょー、あの野郎!」
俺がクソ剣士に欲望がらみの恋心を抱いたのはアラバスタの動乱が終わった頃だった。
その頃から好きで、でも行動を起こすことも出来ず、悶々としていた俺に先程のクソ剣士の表情は最悪だった。
ガチャガチャと金属音を鳴らせながら興奮し始めていたそれに手を添えて俺はギリリと歯を食いしばる。
「あの野郎・・・」
背中に手を滑らせ、クソ剣士に声を上げさせていたアニキは俺のこの反応にニヤリと笑ってみせたのだ。
自分の弟が男の、俺の欲望の対象にされていると分かっていてあの顔をさせてみせたのだ。
「クソ、クソ、クソ!!」
可能な限り迅速に飛び込んだ先はトイレで、俺は情けない気分と、苛立った気持ちのまま下半身の処理をするしかなかったのだった。
SIDE : ゾロ(兄) に続く